ヘリコバクター・ピロリ菌



ヘリコバクター・ピロリ菌感染
ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃の中に感染する菌で、わが国では、胃がんの原因のほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染です。ヘリコバクター・ピロリ菌感染者の胃がんリスクは、15倍以上といわれています。

除菌成功後(除菌治療後、他の治療で結果的に除菌できた場合、自然治癒の場合がある)の胃がんリスクは低下するのですが、未感染者に比べると高いです。胃粘膜萎縮による自然消失後は、感染者と同等の胃がんリスクですので注意が必要です。

感染が長期化するに従い胃粘膜の萎縮(粘膜が薄くなる変化)が生じますが、胃がんリスクは、萎縮変化の程度に伴って胃がんリスクは高くなります。そのため、できるだけ早い時期にヘリコバクター・ピロリ菌感染検査を受けることが望ましいとされています。

ピロリ菌の主な感染時期は乳幼児期で、家族間で遺伝子型が一致することが多いと言われています。また、ピロリ菌は、小児期の生活環境、特に上下水道の整備によって低下を続けています。1950年代以前に生まれた方では40%以上(80%との報告もあります)が陽性でしたが、1970年代では20%、1980年代では12%と1970年代以降に大幅に低下しています。

両親のいずれかがヘリコバクター・ピロリ菌感染の場合、お子さんも感染されている可能性がございますので、ある程度の年齢になられましたら感染検査が望ましいです。また、お子さんがある程度の年齢の方でしたら、早い時期に胃カメラ検査を受けていただくことがよいと思われます。

京都市胃がん健診は、50歳(その年の12/31時点での年齢)以上の方を対象として2年に1度受けていただくことが可能です。バリウム検査と胃カメラ検査がございますが、バリウム検査はお勧めしていません。というのも、バリウムでは早期の胃がんを発見することが非常に難しく、発見できた時点で開腹術が必要になることがほとんどだからです。

しかし、京都市胃がん健診は、鎮静剤がなくてもよい方には、お安くできる検査方法ではありますが、当院でお勧めしている鎮静剤を用いた楽で精密な胃カメラ検査を受けていただくことはできません。また、胃炎治療中の方や抗血栓薬を内服中の方、検査当日の著名な高血圧(180/110以上)などの方は、検査が受けられないなど制約が厳しく決まっておりますので、詳細は当クリニックまでお問い合わせください。


ヘリコバクター・ピロリ菌感染診断
保険診療では、ヘリコバクター・ピロリ菌感染診断は、胃カメラで萎縮性変化を確認した場合のみ検査可能とされています。当クリニックでは、胃カメラ検査当日にヘリコバクター・ピロリ菌感染が疑わしい場合には、ヘリコバクター・ピロリ菌感染検査も施行可能です。

どうしても、胃カメラを躊躇される方には、自費診療でヘリコバクター・ピロリ菌感染検査を受けていただくことも可能です。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染診断と胃粘膜委縮度を判定するペプシノゲン法を行う採血検査であるABC健診(自費検査)というものがあります。

京都市では、胃がんリスク層別化検診として、40、45、50、55、60、65歳(その年の12/31時点での年齢)の方を対象にABC健診が行われています。

一部の企業健診では、さらに若い時期からABC健診が行われるようになってきました。

健診で、ヘリコバクター・ピロリ菌感染と診断された場合は、胃がんの有無を確認するために、必ず胃カメラ検査を受けるようにしてください。


ヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法
保険診療上は、①内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を疑う、②ヘリコバクター・ピロリの感染診断を施行、③ヘリコバクター・ピロリ陽性であれば除菌治療の順で行うことに決められています。

健診などで、ヘリコバクター・ピロリ陽性を指摘された場合でも、内視鏡検査を受けておられなければ、①の内視鏡検査を受けて頂く必要がございますので、当クリニックにご相談ください。
内視鏡検査を受けて頂く理由は、胃がんや胃潰瘍などの病変の有無をチェックせずに除菌だけを受けてしまうことを避けるために設けられております。

一次除菌
除菌治療は、一次除菌として制酸剤と抗生剤の組み合わせを7日間、欠かさず服用いただきます。治療後1-2か月以上経過してから、尿素呼気テスト或いは、便ヘリコバクターピロリ抗原検査を受けて頂きます。除菌成功率は約80%ほどといわれております。

二次除菌
一次除菌でうまく除菌できなかった場合、お薬を変更し、二次除菌を受けて頂きます。二次除菌も7日間、欠かさず服用し、1-2か月以上経過してから、尿素呼気テスト或いは、便ヘリコバクターピロリ抗原検査を受けて頂きます。二次除菌の成功率は90%以上といわれております。また、二次除菌中は、アルコールと薬の飲み合わせが悪いので禁酒が必要です。